インターネット上には実に多種多様なジャンルのコンテンツが存在します。
その中でも、特に正確性や信頼性が強く求められる分野があります。
Googleは常にユーザーの利便性を最優先に考えており、検索結果においても、できる限り正確で信頼できる情報を提供することを目的としています。そうした背景から、Googleはこれらの重要な分野を 「YMYL」 と定義し、非常に厳格な基準で評価しています。
ここでは、YMYLの概要や、SEOにおいて重要となるE-A-Tとの関係、さらにYMYLジャンルで押さえておくべきSEO対策について解説します。
YMYLとは?
YMYLは 「Your Money or Your Life」 の頭文字を取った略語で、直訳すると「あなたのお金、あなたの人生」という意味になります。つまり、ユーザーの人生や意思決定に重大な影響を及ぼす可能性があるテーマやトピック を扱うコンテンツのことを指します。
たとえば、医療に関する情報で誤った治療法や薬の情報が掲載されていると、閲覧したユーザーの健康状態を悪化させたり、最悪の場合は命に関わる事態を引き起こす可能性もあります。
こうした専門的で重要な情報を含む分野は、Googleの検索品質評価ガイドラインにおいて「YMYL」として特に慎重に扱われています。コンテンツの正確性・信頼性・専門性が高く求められ、評価基準も通常より厳しく設定されています。
Googleの品質評価ガイドラインでは、YMYLを
「人々の幸福・健康・経済的安定・安全に影響を及ぼす可能性のあるテーマ」
と定義しており、低品質なYMYLページはユーザーに深刻な悪影響を与えかねないため、他のジャンル以上に厳密な評価が行われます。
YMYLに該当するジャンル・テーマの具体例
Googleの品質評価ガイドラインでは、YMYLに該当する主なカテゴリとして以下のような分野が挙げられています。
ニュースや時事問題
市民権、政府、法律
財産(お金・金融)
ショッピング・買い物
健康と安全
人々の集団(人種・民族など)
その他の重要な意思決定に関わる情報
それぞれの内容について、もう少し詳しく見ていきましょう。
ニュースや時事問題
国際情勢、ビジネス、政治、科学、テクノロジーなど、社会に大きな影響を及ぼす情報を扱うページはYMYLに該当します。
特に、災害や国際ニュースなどは人々の生活に直接影響を与える可能性が高いため、誤った情報が拡散されないよう厳しく評価されます。
なお、エンタメ・スポーツなど日常生活への影響が比較的少ないトピックは、ニュースであっても必ずしもYMYLに含まれない場合があります。
市民権、政府、法律
選挙、政府機関、公共サービス、法律問題などを扱うコンテンツもYMYLの対象です。
たとえば、離婚や子どもの親権、養子縁組、遺言作成などの法律に関する情報は、誤った情報が市民の権利や法的手続きに重大な影響を及ぼす可能性があるため、特に厳密に取り扱われます。
財産(お金・金融)
投資、税金、年金、ローン、銀行、保険など、お金に関わる情報もYMYLの対象です。
金融に関するアドバイスや取引を扱うページは、誤情報によって経済的な損失を招くリスクがあるため、高い正確性が求められます。オンライン決済や取引ができるECサイトなども含まれます。
ショッピング・買い物
商品・サービスの購入に関連する情報や、オンライン決済が行われるサイトもYMYLに該当します。
特に高額な商品を取り扱う場合は、消費者に不利益が生じるリスクを防ぐため、より厳格に評価されます。
健康と安全
医療、薬、病院、救急対策、危険行為の回避など、健康や安全に関わる情報はYMYLの中でも特に重要視されます。
誤った情報に基づく判断が、健康被害や命に関わる結果を招く可能性があるため、極めて慎重な品質管理が行われます。
人々の集団
国籍、人種、宗教、性別(LGBT・ジェンダー含む)などに関する情報や意見もYMYLの対象です。
こうしたデリケートなテーマは、誤情報や偏った主張によって差別や対立を生み出す危険があるため、非常に厳しく評価されます。
その他
フィットネスや食事、住まい選び、大学進学、就職など、人生における重要な決断に関わる情報もYMYLに含まれます。
これまでの具体例に当てはまらなくても、「人生の幸福・健康・経済・安全に影響を及ぼす可能性がある情報」は基本的にYMYLとして扱われると考えておくと良いでしょう。
YMYLとE-A-Tの関係性
YMYLを理解する上で欠かせないのが「E-A-T」という概念です。
YMYLとE-A-Tはしばしば混同されがちですが、それぞれ異なる意味を持っていますので、正しく理解しておくことが重要です。
Googleでは、コンテンツの品質を評価する際の基準として「E-A-T」を定義しています。これは以下の3つの要素の頭文字を取ったものです。
E:Expertise(専門性)
コンテンツが十分な知識と専門的見地に基づいて書かれているかが評価されます。A:Authoritativeness(権威性)
著者やサイト運営者が、その分野でどの程度認知され、評価されているかが問われます。T:Trustworthiness(信頼性)
サイトやページの運営体制、安全性、そして情報の正確性など、ユーザーが安心して利用できる内容であるかが評価されます。
Googleの品質評価ガイドラインでも、E-A-Tは「高品質なコンテンツの評価基準」として明記されています。
SEOにおいては、E-A-Tの各要素を高い水準で満たすことが重要です。特にYMYLに該当するコンテンツでは、これらの基準が厳しく求められます。
ガイドライン内でも「YMYLコンテンツにおいてE-A-Tが低いものは、品質評価を下げる原因になる」とはっきり記載されています。
なお、注意点として、E-A-TもYMYLもGoogleの検索アルゴリズムそのものではなく、個別のスコアや数値で計測されているわけではありません。 あくまでGoogleの品質評価の考え方の一部として用いられています。
※E-A-Tの詳しい解説は別途コラムで紹介しています。
YMYLという考え方が導入された背景
そもそも、なぜGoogleはYMYLという概念を導入し、重要視するようになったのでしょうか?
Googleは常にユーザーの利便性と安全性を最優先に考え、検索体験の向上に努めています。
しかし過去には、検索アルゴリズムの隙を突いて、誤った情報や信頼性に欠けるコンテンツがSEOによって上位表示される事例が多発していました。
特に医療情報においては、正しくない情報を信じたユーザーが健康被害を受けるケースが社会問題化しました。
その代表例が「ウェルク問題」と呼ばれる医療情報キュレーションサイトによる炎上事件です。
このような状況を重く見たGoogleは、検索品質の抜本的な見直しを実施。
YMYLの概念を明確に定義し、特に影響が大きい情報ジャンルについては、より厳格な品質管理を行う体制を整えました。
現在では、こうした高リスク分野では専門性・信頼性の高い情報が優先的に表示されるよう改善が進められています。
YMYL領域で意識すべきSEO対策のポイント
YMYLに該当するジャンルのサイトは、通常のSEOと比べて上位表示のハードルが非常に高くなります。
もしあなたが運営するサイトがYMYL領域に該当する場合は、以下のポイントを意識してSEO対策を進めていきましょう。
著者情報を明確に掲載する
E-A-Tの中でも「権威性(Authoritativeness)」を高めるためには、著者の専門性や社会的な信頼度を示す情報を積極的に開示することが重要です。
たとえば、
資格・認定証の保有
専門機関への所属
専門分野での受賞歴
書籍の出版実績
など、著者の信頼性を高める要素があれば、可能な限り詳しく掲載しましょう。
なお、これらの情報を記載しただけで順位が上がるわけではありません。自社サイトだけでなく、外部サイトでも著者のプロフィールや実績を積極的に紹介していくことが権威性の向上に繋がります。
情報の正確性を担保し、裏付けを明記する
YMYLでは、曖昧な情報や根拠の薄い内容は評価されません。
正確な情報に基づいたコンテンツを心がけ、公的機関や専門家による信頼できるデータ・出典を明示してください。
出典を明記する際は、著作権や引用ルールを正しく守る必要があります。無断転載やコピペのまま出典を示さない行為は、著作権侵害に該当するため注意が必要です。
ウェブサイト運営者の情報をしっかり掲載する
「信頼性(Trustworthiness)」を高めるには、サイト自体の運営者情報を明確にすることが不可欠です。
企業名・所在地・連絡先に加え、以下の情報も充実させましょう。
運営責任者の氏名
カスタマーサポート窓口
利用規約・プライバシーポリシー
決済・返品に関する説明(ECサイトの場合)
こうした情報の不足はマイナス評価の要因になるため注意が必要です。
被リンクや良質なサイテーションを増やす
外部からの評価(レピュテーション)もYMYL領域では特に重要視されます。
Googleの品質評価ガイドラインでも「サイト自身の説明よりも外部の評価を優先すべき」と記載されているほど、外部からの信頼が重視されています。
権威性のあるメディアや専門機関からの被リンク、第三者サイトでの好意的な言及(サイテーション)を積極的に増やしていきましょう。
コンテンツを常に最新の状態に保つ
YMYL領域では情報の鮮度も重要です。
時間の経過とともに古くなった情報や、内容が事実と食い違ってしまうケースも出てきます。
正確性を維持するために、定期的に情報を確認し、更新日や修正履歴を明記することで、検索エンジンにも最新の情報であることを伝えられます。
まとめ
今回ご紹介したYMYL領域でのSEO対策は、実はYMYLだけでなく、通常のSEOにおいても非常に重要な考え方です。
E-A-T(専門性・権威性・信頼性)を高い水準で満たすことが、どのサイトにも共通する大切な評価軸 となります。
特にYMYL分野では、これらをより厳格に意識してコンテンツ作成・運営を進めることで、検索エンジンからもユーザーからも信頼されるサイトを目指していきましょう。